現在の日本は世界一の長寿国(平均寿命)であり、これは世界に誇るべきことであります。健康寿命(心身とも自立した活動的状態での生存できる期間)も世界トップクラスです。こういう高齢社会のなかでできるだけ、要介護の生活期間を短縮すること; 介護が必要な方の介護度を軽くすることに貢献することは、整形外科とリウマチ科に携わる医療人の使命であります。平成19年の国民生活基礎調査では、介護が必要となった原因の第2位が運動器疾患(関節疾患、骨折、転倒)です(第1位は脳卒中)。したがって、高齢者のリハビリテーションは高齢者の状態に応じた適切なアプローチが必要です。関節疾患や骨粗鬆症による骨折は脳卒中による機能低下とちがい徐々に生活機能が低下するものが多く、これらには早期からの予防とリハビリテーションを行うことが効果的であることがわかってきました。
 生活習慣病であるメタボリックシンドローム(高血圧、肥満、糖尿病)に対して、生活機能病であるロコモティブシンドローム(骨粗鬆症、変形性関節症と関節リウマチ、骨折など)が提唱されるようになったのも早期からの予防とリハビリテーションが大切であることが背景です。当クリニックではこういう背景をもとに、以下のことに重点をおいて骨の健康管理やリハビリテーションを行いたいと思います。
 

 

 1)

骨粗鬆症の相談、治療;骨の健康の維持
各人に応じた適切な食事、適度の運動、適度に日光を浴びること、適切な薬物治療の4つが要点になります。必要に応じて骨密度測定、骨代謝マーカーの測定を行い適切な予防と治療を選択していきます。
また、骨折の危険性の高い骨粗鬆症(進行した骨粗鬆症)に対して骨形成促進剤が薬物療法として近年選択できるようになりました。進行した骨粗鬆症に対しては、骨折防止の効果が期待されますので当院でも積極的にこの骨形成促進剤を導入しています。
 

 2)

筋力、体力の維持
60歳代になると体幹筋、下肢筋の筋力低下が進みやすいので、各人の応じた筋力訓練が必要です。
 

 3)

膝の痛み、腰痛、肩の痛みや頚部痛、リウマチの関節炎症状に対するリハビリテーションによる緩和
慢性的な痛みに対しては、筋力訓練や体操が有効です。
 

 4)

各人に応じた運動器のリハビリテーションを考えていく
運動療法(筋力訓練、姿勢動作訓練など)と物理療法(温熱療法、電磁波療法、牽引療法など)を適切に組み合わせていきます。

また、スポーツを楽しまれる方、各年代のスポーツ選手にもリハビリテーションが必要な場合が多いです。私は長い年月にわたって、選手の競技復帰に関してかかわってまいりました。日本体育協会の講習会で身に付けたこと、筋肉、腱、骨という運動器の特徴(年齢によって大きく変わります)を患者さんといっしょに考えていくこと、私自身の経験(アイスホッケー、バスケットボールの選手経験や競技ドクター経験)を生かしながら、単に通院による物理療法だけでなく、各人に応じたアドバイスをしていきたいと思います。